旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
「結局俺は当て馬にもならねぇ存在かよ」


なんか損した、と呟けば、ポン!と肩を叩かれて。


「妬くな妬くな。そのうちあんたにもきっといい相手が見つかるって!」


今回は相手が悪かっただけ、とまた楽しそうに笑って焼き鳥に噛みつく。


「そうかな」


だといいけど、と目線を煙に向けてあの魔性の女を思い出した。


俺は未彩に初めて会った時、こんな華奢で何も出来なさそうな女が造園会社に勤めるのか?と唖然とした。

大学の造園科で勉強してたとは聞いてたけど、知識だけじゃ何も出来ねぇ世界だぞ、と半ばバカにして見てたんだ。


でも、未彩は思った以上に使える奴だった。

体は小柄ながらチョコチョコとよく動くし、何よりも植物のことをよく分かってて、選定のやり方だけじゃなく、草花の栽培や飾り方も上手くてスゴい奴だと感心した。

顧客への接し方も丁寧で好感が持てたし、俺には何かと突っ掛かってくるところも多かったけど、それも可愛い後輩を見てる気分で心地良かったんだ。


それが急に結婚すると聞かされて驚いた。
トンビに油揚げを攫われた様な気分で、その時やっと自分の気持ちに気づいた。


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