旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
(何ここ!?本当に民家なの!?)
ハッと我に返った私はついそんなことを思ってしまい、当たり前でしょ、と自分の胸にツッコミを返す。
(そりゃ確かに大きな旧家に住んでるとは聞いていたけど、このスケール、ちょっと半端ないんですけど!?)
どう見ても一人で住むには広過ぎる感じの家。
それにやたらと庭も広いし、その割には家の周りの雑草は伸びきってて、草原の中に佇むお屋敷…というよりかは、雑草の中に埋もれる幽霊屋敷…といった感じの雰囲気にも見える。
(いや、幽霊屋敷は言い過ぎか)
少なくとも家屋はまだ綺麗で新しい感じがする。
壁には苔なども着いてないし、雨樋には草の一つも生えてない。
(つまり、家のメンテナンスだけはちゃんとしてるってことなんだよね。でも、庭はご覧の通り放ったらかしというか、まるで放置といったところ)
こりゃかなりの難題だと感じながら玄関に近寄り、引き戸の鍵を開けて、ガラリと引く相手の顔を確かめた。
「未彩さん、ようこそ」
どうぞ中へ…と招き入れる旦那様の顔は嬉しそうだ。