旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
今はもうその頃の面影もなくなったけどね…と呆れる彼の眼差しの先には、荒れ放題の和風の庭が広がってる。

その言葉を受け止めながら私は縁側の端に近寄り、じっ…と立ったまま庭の様子を観察した。


雑草が伸びきった庭には、灯籠やつくばいが配置されている。

庭木も紅葉や梅など、四季折々に鑑賞できる樹々が植えられていて、手入れさえ行き届いていればきっと、見事な庭だっただろう…と推察できた。



「どうしてこんなに荒れちゃったの?」


つい責めるような言い方をして皆藤さんを見返す。
彼は私の質問に言葉を失うと困った様に口角を下げ、うん…と呟いて眼前に目を向けた。


「…十年前に祖父が病気で倒れて、祖母はその看病に追われることになったんだ。
祖父の入院期間は二年近くも続いて、結局そのまま他界をした。
残った祖母は、一人でこの家に住むのは嫌だと言いだして離れ、叔母の家族と一緒に同居を始めてしまったんだ……」


二人の思い出深い場所だっただけに、荒れていく庭なんか見たくなかったのかもな…と言う彼は、でも、今日からは少しずつ、前のような綺麗な庭になってくれると思いたいよ…と私を見直す。


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