旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
でも、成り行き上とはいえ、結婚した相手は、まさかの百戦錬磨(ひゃくせんれんま)みたいな旦那様。

こんな素敵な人と初めての体験なんてこの上なく貴重で嬉しいし、彼に任せてれば何の不安もなく終わり、まあ良かったで済むことなのかもしれない。


……でも、彼は過去に関わってきた女性達とは十分経験もしてるだろうから、そういう人達と未経験の自分を比較して、頭の中でいろいろと思われるのも何だか嫌だ__。



(遠慮します…とか言ったら怒られる?何の為に結婚したんだって聞かれたら、庭の為です…なんてバカなこと、正直に答えれないよ)


だったらなんて言う?と思うと、また焦ってしまう。

いろいろ悩んでると腕の中で黙りこくってしまい、それには彼も困惑したようで、肩から手を下ろすと背中も解放し、小さく溜息を吐いてこんな言葉を囁いた。


「…まあ今夜はお互い疲れてるからやめようか。そんなに急ぐことでもないし、おいおいでもいいから」


結局、相手に気を遣わせてしまい、その後は子作りの話題は上がらなかった。

正直私はホッとして胸を撫で下ろしたけど、多分それが原因で、その後のすれ違いが始まってしまったんだろうと思う………。



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