旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
「まだかなぁ」


ぐぐーっと鳴るお腹の音に耐えきれず、壁掛け時計を振り返った。

キッチンに掛けられた丸い電波時計はいつの間にか午後七時を過ぎていて、それでも帰る気配のない相手に、私は思わず愚痴の様な言葉を漏らした。


「……遅くなるならなるって、一言連絡してきてよ」


そりゃ新婚初日から除草剤とか草刈り機とか、らしくない発言をしたのは私だけど。


「向こうも断ればいいのに仕事優先してるじゃん。こっちは反省して、折角自分が得意のハンバーグを作って待ってるのに、何の音沙汰もなしってどういうの!?」


どこの新婚さんでもこんなことある?と思うが、いーや、ない、ともう一人の自分が断言する。



「あーもう、お腹空いた」


先に食べちゃえ、と良からぬ思いつきでIHのスイッチをオンにする。

皆藤さんの分は後から温め直してあげればいいか…と鍋からタッパーへ移したところでインターホンが鳴り、ドキンと胸が弾んだ私は、「はーい」と声を跳ね上げ、パタパタと足音を立てながら玄関口へとダッシュした。



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