旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
「…ねぇ、未彩ちゃん」


皆が現場へ向かってしまった後、桂さんはチョイチョイと人差し指を曲げながら私を呼び、「顔を貸して」と合図した。



「何ですか?桂さん」


私も現場に向かわないといけない時間なんだけど…と困りながら近付くと、彼女はガシッと腕を私の腕に絡ませ、「本当にいいの!?」とコソコソしながら訊いてくる。



「え?何が?」


キョトンとしながら訊き返すと、桂さんは「無自覚か」と一言漏らし、「まあ別に知らないならそれでいいけど」と納得してる。



「え?何のこと?」


ますますキョトンと目を丸くさせる私だが、桂さんは「別に気にしないで」と手を振った。


「それよりも大丈夫なの?いくら同僚とは言え、新居に男性を招き入れるなんて」


それを聞いたら皆藤さん驚くんじゃない?と訊ねてくるが、彼には彼で、私にはどうも内緒にしておきたいことがあるみたいなんです…とは、ちょっと言い出せず。


「大丈夫ですよ。私が克っちゃんを入れるのは庭の中だけですし、それに、そもそも必要なのは克っちゃんじゃなくて、彼が扱うユンボの方ですから」


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