旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
「本当は何でも言い合える仲になりたいのに」


まだ遠慮が多くて、それにちっとも顔を見てゆっくり話せない。

彼の祖父母のように仲睦まじくこの庭から月を眺めたいのに、その相手とは毎晩すれ違ってばかりいる……。



「人妻だと言うなら、いつ会ってゆっくり話せばいいの?」


言うのは容易いんだよ、と愚痴を漏らす。

せめて、そういう愚痴の一つくらい聞いて帰れ…と文句を呟き、それでも言えたら苦悩はしない…と独り言をこぼして、月詠みの庭で一人、暗くなってく空を見上げた。



朝あれほど早く帰ると話していた皆藤さんは、やっぱり待ってても帰って来ず、私は深い溜息を漏らした__。



「出来もしないことを口にするのはやめようよ」


これならまだ今夜も遅くなると言ってくれた方がいい。
そしたら夕食も多く作らなくて済むし、残ったものを翌日のお弁当に入れなくてもいいから助かる。



「夜も昼も同じ物食べるの、飽きてきたな…」


明日からはもう夕食一人分だけにしようかな…と呟きタッパーに詰める。
それを冷蔵庫に入れてドアを閉め、お風呂に入って休もうとキッチンを出た。


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