旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
彼の魅力に吸い込まれるように返事はした。
今もそれは変わらなくて、でも、それだけに流された訳じゃないと思いたい__。



「本当か?」


じぃっと見つめてくる眼差しに焦りながら、うん、と首を縦に振る。

そのままダラダラと異様な汗を感じて見返してると、克っちゃんは、ふん…と鼻息を漏らし、目線を外して、手にしていたタバコを地面に落として踏み付けた。


「だったら同僚に甘えんのもこれ限りにしろよ」


ニコチンの香りが残る掌で私の髪を掻き乱して、ペシッと仕上げのように平手打ち。


「頼ってくんのもこれ限りにしてくれ」


多少はこっちの気持ちも察しろ、と言いだす相手に目が点になり、え?と言いながら歩きだす背中を目で追った。



「どういう意味!?」


慌てて彼の後を追い、待って…と詰め寄る。


「克っちゃんの気持ちって」


そんなの全く知る由もない。
だって、同僚でいつも親身に庭づくりの話を聞いてくれて、協力してくれただけの相手だから。



「ねぇ、克っちゃん!」


待って、と腕に手を掛けた時だ。
目の前に旦那様が立っていて、ビクッとして固まった。


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