旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
「いや、別にいいけど」


皆藤さんはさっと目線をトラックに流し、荷台に乗ったユンボも目に留めたと思うけどスルー。

こっちはその視線の動きをハラハラしたまま見つめ、何も訊いてこない彼に安堵しつつも、若干恐怖も感じて克っちゃんに、「早く帰って」と頭の中で思った。


でも、そんな私の思いなど、彼に伝わる筈もなくて……。



「へぇ…」


声を発した克っちゃんは、見定めるような雰囲気で皆藤さんを見て、「あんたが未彩の旦那?」と態度デカそうに訊く。


「よろしく。俺、こいつの先輩で、何かといつも世話をしてやってる迫田克典」


恩着せがましく自己紹介しだした彼は、ジロジロと皆藤さんを眺め、笑いを含んだ。


「ハッ…さすがは税理士さんだ。インテリ風で頭が冴えてそう」


小馬鹿にした様な感じで続け、細い腰…と言いながら自分は胸を張って見せてる。



「克っちゃん!?」


何を言いだすの、と慌てながら叫んでしまい、申し訳ない気持ちで皆藤さんを見返した。


「ごめんなさい。同僚が生意気で」


庇うつもりはないけど、これが彼の日常だから…と言おうとした。
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