旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。

そして、敷地内からトラックが消えてくのを確認し、徐ろに振り返って名前を呼んで＿＿。



「未彩さん」


ドキッとする様な低い声にビクビクしながら顔を見遣る。

彼のいない間に男性を勝手に招き入れたと怒られたらどうしよう…と焦りながら見つめてると、皆藤さんはふわっと微笑み、改まったように、「ただいま」と挨拶してきた。


「今朝は急に早朝出勤して悪かった。今夜こそ絶対に早く帰るつもりでいたんだ。…ごめん。毎晩帰りが遅くなってばかりで」


きゅっと引き締まる唇に目を向け、ホッとすると同時にやっぱり怒ってるのかも…と疑ってしまう。


「お…おかえりなさい」


肩を竦めながら挨拶し、このまま立ち止まってたら月詠みの庭をリフォームしたことが彼にバレると思い歩きだした。


「私こそ、待ちもしないでさっさと寝てしまって」


ごめんなさい…と返しながら、彼が庭の変化に気づいてないことを願った。

ヒヤヒヤしながら玄関先へ着くと、皆藤さんが鍵を使って扉を開け、初めてこの家に来た時と同じように、「どうぞ」と私を先に通そうとした。