旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
パタ…と足取りが止まって廊下の真ん中で立ち止まる。

このまま何も話さずに寝てしまうのはやはり得策じゃない、と思う気持ちも湧きだしてしまい、だったらどうすればいいの?と自分に問い掛けて悩みだした。


(彼にハッキリ訊いてみた方がいいんじゃない?あの甘い香りは一体何処で付けて帰ってくるの?と…)


例えばそれが原因で、この先の結婚生活が望めなくなってしまっても、無駄に時間が過ぎて行くよりもいいんじゃない?

彼にとってもその方が助かるんじゃない?…と思う気持ちも湧いてきてしまい、勇気を振り絞り、今夜訊いてみようかと思い振り返った。


キッチンの隣に浴室はある。
その前で彼を待ってたら出てくるはず…と覚悟を決め、踵を返して歩こうとした。



『カチャッ』


歩きだそうとする私の前で浴室のドアが開き、隙間から彼が顔を覗かせた。

ビクッとして、彼の顔と湯上りの格好とに目を奪われ、歩きだすのも忘れて見入ってしまった。


< 85 / 225 >

この作品をシェア

pagetop