旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
ひょっとして、克っちゃんが言ってた言葉を真に受けた?と思い弁解。
驚いて喋ったから、彼も最初は少し疑ってる雰囲気にも見えたけど__。


「それは…本当?」

「本当ですよ!」


そんなの嘘言うわけないじゃん、と胸を張って言い返す。
すると、缶ビールをテーブルの上に置いた皆藤さんはガックリと項垂れ、はぁ…と息を吐くと笑いだして、そうか…と言いながら、安心した…と囁いた。



「あいつが意味深な言い方するから」


それに…と言い足しながらこっちに詰め寄り、きゅっと髪の毛の先に指を絡める。
スン…と鼻を擦り寄せて匂いを嗅ぎ、ぼそっとこんな一言を……


「髪の毛から煙草の匂いがしたんだ。だから何かあったのかな、と余計な詮索をした」


今はしないね、と当たり前のように呟き、そのまま握って離そうとしない。



「それは…」


多分、その前に克っちゃんがタバコを吸ってたからだと思いつく。

その指で、いつもみたく私の髪の毛をグシャグシャにしたから匂いが付いたんだと気づき、げっ…と思いながらも戸惑い、あの人、人の髪をグシャグシャにするのが癖なんです…と説明した。


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