旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
「私、会社では一番の下っ端だから」


おかげでいつも皆に揶揄われてばかりなんです、と困った様に加える。
特に克っちゃんは年が近いせいか私を妹のように扱い、ひどく馴れ馴れしいところがあると実感した。


「あーいうの、気にしなくていいですから」


そういう人です、と息を巻きながら訴えた。
そういう輩も世の中にはいるんだと言いたい気分で、あまり接点もないよね…と思いながら皆藤さんを見た。



「そうか…」


彼は安堵した様にホッと笑う。
その顔を見てドキッと胸の音が鳴り、きゅん…と聞いたこともない軋みまで感じた。


「でも、ちょっと妬いたよ。こういう風に他の男に触れられるなんて、そういうの出来るだけ無いようにして欲しい」


許せない、と囁く声に胸が弾ける。
思わぬ彼の言葉と嫉妬に直面し、目も逸らせずに見つめ返してしまった__。



「未彩さん」


名前を呼ぶと彼が後頭部に手を回す。
さらりと髪の毛を撫でるように掬われるとゾクゾクと変な気分がして、ビクッとしながら相手を見た。


「今日みたいに、他の男に触れさせるなんて許せないから」


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