涙のち、銃声
「被害者は交差点のほぼど真ん中で、
仰向けに倒れてたそうです。」
「・・・・ブレーキ痕が無いな。」
「ですね・・。」
早速真田さんが路面を指さした。
詳しい状況が分からないけど、
目の前に人が現れたら普通、
咄嗟にブレーキを踏むはず。
タイヤと路面の強い摩擦でそこには“ブレーキ痕”が残るはずだったけど、ここには無い。
「被害者側が信号無視したか・・・。」
「加害者が飲酒や脇見等していて、
判断遅れたって所ですね。」
「ちょっと先の方も行ってみよう。」
真田さんと並んで現場付近を歩く。
正直、刑事課にずっといるからこの手の事件は慣れていないけど、
捜査の基本は事前に真田さんから教わっていた。
しばらく路面と睨めっこして改めて・・
「うん。全く無いな。」
「どういう事っすかね・・。
仮に撥ねる瞬間まで気付かなかったとしても、かなりの衝撃があったはずです。
何が起こったか分からないまでも、
停車はすると思うけど・・。」