涙のち、銃声


“勘が良い”と言えばそれまでだけど、
この時の私は不思議に思っていた。


いつもウチに来る“2人”の警察官。


いつも1人が淡々と状況を話して、

もう1人が“必ず捕まえる”、
“奥様の無念を晴らす”と、

“精神論”のような事を言っていた。


だけどこの日、その人は口を紡いでずっと目線を下にしていた。




「・・・アッ・・・・。」


「・・・・・・。」


淡々の人が“帰ります”とお父ちゃんに告げた後、ふいに精神論の人と目が合った。


盗み聞きのような行いをしていたので怒られるかと思い、思わず小声が出た。


でも・・・その人は声には出さず、
3文字分だけ口を動かした。



当時の私は分からなかった。
でも今ならハッキリと分かる。


その人は、“ごめん”と私に告げたんだって。














< 32 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop