涙のち、銃声


「・・・・!・・・・!!!?」


綺麗に折られたその鶴を手にとって眺めているうち、

呼び起こされるかのように頭の中いっぱいに記憶が蘇った。






“どうぞアズサちゃん!
折り紙で作った鶴です!”


“おいタク坊。
誰に向かって口聞いてる?”


“いいのゴローちゃん。タク坊にそう呼んでってアズサからお願いしたの!”


“ガハハハ!おいタク坊。今度アズサに折り方教えてやってくれ。”


“きょ・・恐縮っす!”






「アズサ?どこ行くの!?
もう夕飯出来るよ!」



お婆ちゃんの呼び止める声が聞こえたけど、夢中で外に飛び出した。



「タク坊・・・・タク坊・・!!!」


封筒の中には折り鶴以外何も入っていなかった。


封筒の裏に書いてあった差出人は、
聞かない名前だった。


でもその折り鶴を触って記憶が蘇り、
無意識に鶴を解体した。


青色の折り鶴。
私が好きだった色。


その裏、白い部分にメッセージが書かれていた。



【生きてくださいアズサちゃん。
それがおやっさんの願いです。】



< 89 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop