次期院長の強引なとろ甘求婚
フラワーショップ彩花の危機
暖かくなってきた春の店先には、カラフルな花たちがよく似合う。
優しいピンク色のチューリップや、淡いパープルカラーのストック。鈴のような可愛らしい白い花をたくさんつけている鈴蘭に、発色のいいポピーには見ているだけで元気をもらえる。
「オレンジ色ぽい花束、こんな感じのお造りはいかがですか?」
「うん、いいわね! 元気の出る感じで、お見舞いにぴったり! とても綺麗だわ」
「ありがとうございます! リボンも合わせてイエローとかにしますか? ビタミンカラーで」
「そうね。お姉さんセンスいいから、お任せする」
お客様の満足そうな笑みを目にして、「ありがとうございます!」と奥のカウンターに踵を返す。
駅から数分のところにある商店街の入り口に店を構える『フラワーショップ彩花(さいか)』が、私――山城未久(やましろみく)の職場であり、実家だ。
家が花屋を経営している環境に育ち、高校を出て、特に疑問を持たず専門学校のフラワーアレンジメント科に進んだ。
卒業後は、自営業の両親を手伝う形で店頭に立つ毎日を送っている。
フラワーショップでの仕事は、一見、花に囲まれて華やかに見えるけれど、季節によっては過酷な仕事だ。
特に真冬は酷で、水を取り扱うため冷えと手荒れに悩まされる。
それでもやっぱり、花の中で仕事ができることは、私にとって幸せなことに変わりない。
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