次期院長の強引なとろ甘求婚
「オッケーです、入りました」
背後にいる樹さんにやっと声をかける。
高級スイートのバスルームで浴槽はとっても広いけど、すごく距離を取って入っているわけではない。
お互い生まれたての姿でいるというだけで、猛烈に落ち着かないのだ。
「すごくいい香り……癒されます」
お湯に浸かって温まっているからなのか、バスルーム中がバラの高貴な香りに包まれている。
こんな贅沢な入浴はそうそう味わえない。
「あの、こんな素敵なものを用意していただいて、ありがとうございます」
顔だけ振り向いて、背後の樹さんを見る。
いつもセンス良く清潔にセットされている髪が、濡れてラフにかき上げられているのを目撃して、心臓がとくとく音を立て始めた。
それを隠すように、すぐに前へと向き直る。
今少し前まで彼の腕の中で甘い声を上げてしまっていたことがリアルに蘇り、誤魔化すように浮かんでいる花を次々と手に取って香りを楽しんだ。
「いいえ。喜んでもらえたなら俺は満足」
花に気を取られていると、伸びてきた両手が私の腰を掴む。
突然のことに「ひゃっ」と変な声を上げると、樹さんはそのまま私を自分へと引き寄せた。