次期院長の強引なとろ甘求婚


 お湯の中で背後から腕を回され、少し治まっていた鼓動の高鳴りが再び激しく音を立てていく。


「これからのこと、話してもいい?」

「これからのこと……はい」

「未久のご両親には挨拶させてもらったから、一度お互いの家族で顔合わせとかしないといけないよね。あ、未久がうちの両親に会うのが先かな」

「樹さんの、ご両親……!」


 お父様もお母様もお医者様だと聞いているせいか、緊張はより一層高まる。

 うちの両親とはタイプも雰囲気も、絶対に違うはずだ。

 今からお会いすることに気後れしそう……。


「緊張、しますね……」

「そう? 大丈夫、別に普通の人たちだから」

「いえ、絶対そんなことあるはずないです。だって、お医者様のご夫婦って……」


 どこか声が深刻な調子になってしまう私を、樹さんはふっと笑う。

 そして「ま、相手の親に会う時は緊張するものだよね」とそこには同意してくれた。


「でも、結婚相手は親じゃなくて俺なんだから、変な心配して、勝手に不安にならないこと」

< 102 / 103 >

この作品をシェア

pagetop