次期院長の強引なとろ甘求婚
「やっぱりそうだ、花屋さんの」
「あっ……」
顔を向けてそこにあった姿を目にした途端、意識が一気にパッと冴えるような感覚を覚えた。
「こっ、こんにちは!」
おかげで咄嗟にした挨拶が動揺丸出しになる。
そんな私とは対照的に、普段と変わらない落ち着いた柔和な笑みで彼は「こんにちは」と挨拶をした。
お店の外でこうして顔を合わせるのは、これが初めて。
ぼんやりと突っ立っていた私に声をかけてきたのは、私が素敵だと勝手にときめいている、あの花束を買いに来られる長身スーツのお客様だった。
今日もいつも通り、スリーピース姿がきまっている。
まさかこんなところで、あちらから声をかけてきてくださるなんて思いもしなかった私は、体の前で組み合わせた手をもじもじとさせていた。
「こんなところでお会いするなんて、奇遇ですね」
「は、はい……」
「……? もしかして、偵察中、とか?」
「えっ?!」