次期院長の強引なとろ甘求婚
彼の正体と、思わぬ申し出
四月下旬――世間は大型連休となるゴールデンウィークを迎えた。
朝の情報番組では各地の行楽地の情報を伝え、帰省する人たちが画面に登場したりもしていた。
そんな楽しそうなテレビを横目に朝の支度をし、両親より一足早く店へと向かう。
シャッターを開けるために店前に出ると、そこに見た光景に「えっ?」とひとりにもかかわらず思わず声を出してしまった。
シャッター前に割れて落ちた、五個の生卵。
店に向かって投げつけたのは一目瞭然で、シャッターに中身が飛び散り、殻は地面に無造作に散らかっている。
「ひどい……」
明らかに店に対する嫌がらせだ。
でも私の知る限り、今までこんな嫌がらせを受けたことはないはず。
一体、誰がこんなことを……。
昨日の閉店後から今までの時間の間に、何者かが卵を叩きつけていったということだ。
防犯カメラは店内に一台設置しているだけで、店前には置いていない。
しばらくその光景にショックを受けて呆然としていたけれど、ハッと我に返りすぐに水を流して清掃を始めた。