次期院長の強引なとろ甘求婚

　まさかこんな風に止められると思ってなかった私は、驚いてびくりと肩を揺らす。

　すぐに手は離されたけれど、一気に高鳴ってしまった鼓動がうるさく鳴り響き始めた。

　三角先生の方も私を止めたのは咄嗟の行動だったのか、診療室内を振り返り、誰も人がいないかを確認する。

　少し前にさっき受付にいた看護師さんが書類を届けに奥から入ってきたけれど、今は診察室内には私と三角先生のふたりきりだった。


「まだ診察が終わったと言ってませんよ？」


　急にドクターの立場から意見した三角先生は、微笑んで「座ってください」と言う。

「すみません」と素直に謝り、再び椅子に腰を落ち着けた。


「話してくださって、ありがとうございました。もしかしたら、言いにくいことも打ち明けてくださったのかもしれません」


　真っ直ぐに私を見つめ、三角先生は真摯な口調でそんなことを言ってくれる。

　私の方こそ余計なことを話し過ぎてしまったと反省し、慌てて首を横にぶんぶん振った。