次期院長の強引なとろ甘求婚


「この間、あの話を聞いてから、ずっと気掛かりだったんだ。何か、力になれないかなって」

「えっ……」


 思いもよらぬ言葉に、どきんと鼓動が音を立てる。

 それは、一体どういう意味で言っているのだろうか。

 何より、気に掛けてもらっていたということが信じられないし物凄く嬉しい。


「ありがとう、ございます……そんな風に言ってもらえるなんて」

「社交辞令とか、建前でもない。本当に、助けたいって思ってる」


 私の声にかぶせ気味に返ってきた言葉は真剣で、黙って彼の端正な顔を見つめる。

 そのうちに、デスクからメモ用紙を取り出した三角先生は、そこにさらさらとペンを走らせ、私へと差し出した。


「お店のこと、一緒に考えたいと思っているから、頼ってもらえたら嬉しい」


 そんな危うい話の最中、奥から再び看護師さんが現れ、三角先生に何か指示を仰ぎに声をかけてくる。

 何事もなかったように私にメモだけ手渡し、三角先生は「では、さっきお話したお薬を処方しますので」と、何食わぬ顔で診察を締めくくった。

 診察室を無事あとにし、手の中にあるメモをそっと開いてみると、そこには電話番号とメールのアドレスが達筆な走り書きで残されていた。

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