次期院長の強引なとろ甘求婚


『なんか無機質よね、うちの窓口は』

 いつだか、うちの病院の総合受付を眺めながら、母親がぽつりと呟いた言葉がきっかけだった。

 それなら、花でも飾ってみたらどうかと、試しに近くのフラワーショップに入ったのが始まりだった。

 飾ってみて良さそうなら、どこかと契約して定期で入れてもらえばいい。

 はじめはそう思っていたのに、気づけば〝フラワーショップ彩花〟に自ら通うようになっていた。

 初めてお店を訪れた時、彼女はにこやかに声をかけてきてくれた。

『何かお作りしましょうか?』と。

 今でもその時の笑顔と、明るい声のトーンははっきり覚えている。

 小柄で、てきぱきとよく動き、重そうな鉢をせっせと運んでいるところもよく見かけた。

 水仕事も多いからか、冬場は花束を渡してくれる手は痛そうなあかぎれもあったりした。

 花に囲まれて仕事をしている彼女を見ていると、これぞまさに天職というものなんだと勝手に思っていた。

 花の中に溶け込んでいるとでも言えば、ぴったりの表現かもしれない。

 何より、彼女自身が花のような人だということなのだ。

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