次期院長の強引なとろ甘求婚
エリートドクターの真剣求愛
机の上に置いたメモをじっと見つめ、つい「ふう……」と息をつく。
ほんと……字もイメージ通りの字、書く人だな。
紹介された心療内科にかかりに行った先で、常連の彼がドクターだったということを知り、早一週間……。
それだけでも十分驚いたのに、帰り際に連絡先のメモを手渡された。
『お店のこと、一緒に考えたいと思っているから、頼ってもらえたら嬉しい』
あれは、一体どういう意味だったんだろう……。
心療内科の先生だから、気遣いというか、治療の一環で優しい言葉を掛けてくれたに違いない。
そうだとわかっていても、手元に残ったこのメモが私をそわそわさせる。
診察を受けてから、処方してもらった薬を飲んで数日が過ぎると、耳の聞こえは元に戻った。
安定剤のようなものと、よく眠れるための薬だったけど、回復は話を聞いてもらったことも大きいと思う。
彼の正体が明らかになって、今まで感じてきたことが納得できた。
穏やかで柔らかい雰囲気と、優しい話し口調。
心療内科のドクターと知って、天職に違いないと思えた。
今度の診察の時、耳のことだけじゃなく、お礼を言おう。
気に掛けてもらって、嬉しかった、って……。
「未久ー! ちょっと、未久ー?」