次期院長の強引なとろ甘求婚
「未久さんから伺いました。お店を閉めるというのは、本当ですか?」
唐突に切り出された話題に、両親はハッと驚いたような顔を見せる。
どうして彼がそんな事情を知っているのか。まさに顔にそう書いてある。
「大変失礼なことを承知で伺いました。申し訳ありません」
数十秒前まで賑やかだった玄関先に沈黙が落ちる。
返答に困った様子の両親は顔を見合わせ、そして揃って私に視線を寄越した。
「その方向でお考えなら、ぜひ、私に支援させていただけませんか?」
はっきりとした声音で、三角先生は両親に申し出る。
一瞬、訳が分からなかったのか、両親は二人揃って動作がぴたりと静止していた。
「えっ……それは、あの、一体どういう……」
困った調子で父親が三角先生に訊き返す。
すると三角先生は真剣な眼差しを父親に向け「そのままの意味です」と言った。
「負債がおありでしたら、私が引き受けます。なので、店じまいするということは考え直していただけませんか、未久さんためにも」
負債を、引き受けるって、うちの借金をということ?!
な、なんでそんなことを三角先生か? ど、どういうこと……?!
「三角先生、何を仰って――」
「その代わりなんていったら到底足りない話だと思いますが、結婚を前提に未久さんとお付き合いさせていただきたいと思い、今日はお邪魔させていただきました」