次期院長の強引なとろ甘求婚
え……?
今、なん、て……?
やっぱり、仕事から戻って私は寝てしまったのかもしれない。
それで、三角先生がやって来て、うちの借金の肩代わりをするかわりに私とお付き合いさせてくれと両親に頼むなんて夢物語を見てしまっているのかもしれない。
そんなこと、私の身に起こるはず……。
「もし、お付き合いしている方がいるなら、潔く身を引きます。でも、もちろん持ち掛けた支援はさせていただきたい」
「そっ、それはうちの未久にはいないと思います! なぁ、未久」
私にはそういう相手はいないと、父親が即座に答える。
確かに付き合っている男性はいないけど、でも、そんな即答しなくても……。
というか、まだ夢が続いている……?
父親の回答に三角先生は「そうですか」と微笑む。
「でもしかし、三角さんにうちのそんな事情を――」
「私が支援したいと勝手に言い出したことなので、その点はお気になさらず」
困り果てた様子の父親を三角先生は爽やかに制す。
そして、呆然と立ち尽くす私に優しい眼差しを向けた。
「考えてもらえるかな? 前向きに」
「え……あ、はい……」
夢かうつつか。
丁寧に両親に挨拶をし、帰っていく広い背中を見つめながら、私は未だ自分の身に起こっていることが理解できていなかった。
ただ、鼓動は尋常じゃない速度で大きな音を立てていた。