次期院長の強引なとろ甘求婚
「未久、先生によろしくな!」
「くれぐれも、粗相のないようにね」
「そうだぞ、しっかりな!」
私は今から一体どこに行くんだ?とツッコミたくなるような見送りの両親。
「あの、さ……私、これから診察に行くだけなんだけど」
そう、今日は心療内科の再診日。
それなのに、両親は揃って何か勘違いでもしている様子で出がけの私に釘を刺してくる。
「だから言ってるんじゃない! ぼんやりしてないで、ちゃんと先生と――」
「あー、もう、わかったってば、行ってきます!」
三角先生が突然うちに訪問してから、早三日……。
玄関で三角先生を見送ってから、両親は揃って大騒ぎだった。
私と同じく、三角先生を素敵な方だと思っていたらしい母親は、いつの間に結婚を前提にお付き合いをお願いされる仲になっていたのかと大興奮。
父親に至っては、未久が三角病院に嫁ぐのかと、勝手すぎる妄想を繰り広げて、その晩は祝いだとかなんとか言って普段飲まないお酒を飲み始める始末だった。
私を置いて、勝手に話が盛り上がっている状態だったけれど、当の本人はそれどころじゃなくて……。
あの晩は脳が興奮状態だったのか、なかなか寝付くことができなかった。