次期院長の強引なとろ甘求婚
その日の晩――。
閉店作業をし、すぐ裏にある自宅へと帰ると、先に帰っていた両親が食卓に揃ってついていた。
「ただいま」
「ああ、未久、おかえり」
振り返った父親の張りのない声に首を傾げたくなる。
その向かいに掛ける母親も冴えない表情で「おかえり」とこっちに目を向けた。
「どうしたの?」
そう訊かざる得ない雰囲気に、ふたりの掛けるダイニングテーブルに近づく。
食卓には、〝親展〟と入った銀行からの何通かの封書が置かれていた。
「未久にも、話しておかないといけないかもしれないな……」
テーブルの上に視線を落としたまま、父親が重い口を開く。
深刻な空気が嫌なほど伝わってきて、父親と母親の顔を交互に見ていた。
「何? どうしたの?」
「……店を、畳もうかと思ってるんだ」
「えっ……?」
父親からの思わぬ告白に、心臓がドクッと嫌な音を立てて鳴った。