次期院長の強引なとろ甘求婚
「何か飲む? 俺は車だから飲めないけど、未久さんよかったら」
「い、いえ! 大丈夫です」
「お酒、普段から飲まないの? 飲めない?」
「いえ、そんなことはないんですけど、先生が飲まれないのに私だけなんて……」
「ああ、なるほど。気にしなくてもいいのに」
こう話していても、三角先生の穏やかな空気は健在。
出会って間もないころから感じていた、落ち着いた余裕のある雰囲気は、三角先生の持って生まれた性分なのかもしれない。
ふんわりと包み込むような話し方や、柔らかく優しい表情に、いつも自然とドキドキさせられてしまう。
「でも、こうやって未久さんと食事ができる日がくるなんて、ちょっと非現実的」
「えっ……?」
「お店のこと、話してもらうことがなかったら、きっと今も俺は単なる客だっただろうからさ」
たしかに、ずっと〝店員とお客〟の関係だったのが、お店を閉めるかもしれないということを話してから急展開した。
両親に閉店について話されることがなかったら、今、こうして三角先生とテーブルを挟むことはなかったのだ。
「不謹慎な言い方かもしれないけど……今回のことは、俺にとっては、未久さんとお近づきになれるきっかけだったと思ってる」