次期院長の強引なとろ甘求婚


「病院だと、込み入った話ができないから、食事でもって誘っていただいたみたい。別にそれだけだよ」


 話し始めると、お箸を手にしたふたりはやっぱり食事を中断させてこっちに注目する。


「込み入った話って、この間の、うちに来たときの話の返事を聞かれたってこと?」

「まぁ……そんなところかな」


 すると、両親の声が揃って「なんて返事したの?!」とはもる。


「なんてって……よろしくお願いします、って――」


 そこまで言ったところで、母親が年甲斐もなく「きゃー!」と奇声を発する。

 父親もせっかく手にした箸をぱしっとテーブルに置き「本当か!」と声のボリュームを上げた。


「ちょっと、そんなに騒がなくっても……」

「そんなの、騒ぐなって方が無理に決まってるでしょ! 未久があんな大きな病院の跡取りとお付き合いすることになるんだから! しかも、結婚を前提にだなんて!」


 母親の興奮は治まるどころか白熱し、どんどん声のトーンも上がる。この調子だと、今にも親戚中に報告でもし出しそうな勢いだ。


「お母さん、落ち着いて。まだ何も話が進展したわけでもないし、そんな大袈裟だよ」

「でもだって、これから三角さんとお付き合いするって話になったのよね?!」

「それは……まぁ」


 執拗に追及されるうち、顔に熱が集まってくるのを感じる。

 とりあえずこの場を立ち去ろうと、「お風呂入る」と言ってソファを立ち上がった。

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