次期院長の強引なとろ甘求婚
「あっ……」
振り向くと、シャッターを目にして駈け寄ってくる三角先生の姿があった。
初めてスーツじゃない、ボーダーのサマーニットに細身のブラックデニムというカジュアルな姿で、一瞬別人かと疑う。
しかしその表情は驚きを隠せない様子で、隅から隅に視線を走らせる。
「誰がこんなことを……」
「わからないんです。悪戯でしょうか……」
三角先生は周囲を見回し「でも」と私を見下ろす。
「他の店はこんな悪戯されてない。未久さんのところを狙ったみたいだ」
「……実は、前にも……このシャッターに生卵が投げつけられていたことがあって。その時は、普通に片付けて、そのまま届け出もしなかったんですけど……」
「それは、いつ頃のこと?」
「まだ、一ヶ月は経っていないです。ちょうど、四月の下旬頃で、連休の前でした。うち……誰かの恨みでも買っているんですかね?」
つい力ない笑みを浮かべてしまうと、三角先生は眉根を寄せて力強く「そんなはずはない」とはっきり言い切った。
「とにかく、警察に届け出て、これは即日消してもらう手配をするから」
そこからは三角先生がスマホを取り出し、警察への届け出、そのあとすぐに知り合いの業者に依頼をし、シャッターのいたずら書きを消してもらう話をつけてくれた。
少しして出てきた両親にも、三角先生が私に代わって心配ないことを話し安心させてくれていた。