次期院長の強引なとろ甘求婚


 警察とシャッターの塗装の手配のほかに、いつの間にか防犯カメラのことまでお願いしてもらっていたと知り、あっと驚いてしまう。

 言葉が出ずに横から見つめるだけしかできないでいると、三角先生はちらりとこちらに顔を向けて微笑み、私へと片手を伸ばした。

 その手が私の頭の上に載り、優しくぽんぽんと髪を撫でる。


「不安だと思うけど、大丈夫だよ。ちゃんとお店は守るって、約束したからね」


 三角先生……。

 大きな手が安心させるように私の頭をよしよしして、またハンドルへと戻っていく。

 優しい気持ちがその手から流れてきたようで、不思議と不安定だった気持ちが落ち着いていくのを感じていた。

 同時に、トクントクンと鼓動の高鳴りも増していくのを全身で感じる。


「ありがとう、ございます……もう、なんとお礼したらいいのかわからないくらいで……」


 どう今の気持ちを伝えようか、拙い言葉で紡いでいると、三角先生はクスリと笑う。


「お礼なんていらないから、その代わりに今日は、俺との時間を楽しんでくれる?」


 不安や心配事は、いつの間にか甘い鼓動の高鳴りへと変わる。


「はい……よろしく、お願いします」


 真面目にそんな返事を返すので精いっぱいだった。

< 56 / 103 >

この作品をシェア

pagetop