次期院長の強引なとろ甘求婚
「えっ……すごい!」
「何もすごくないよ。未久だって家業が花屋なんだし、跡継ぎでしょ。それと同じこと」
確かに同じ跡継ぎではあるけれど、病院の後継者と花屋の後継者では次元が違う。
「いえいえ、全然スケールが違いますよ。あんな大きな病院の次期病院長と、うちみたいな小さな花屋の跡継ぎなんて……あの、三角先生はどうしてお医者様を目指されたんですか?」
「どうして、か……もう覚えてないけど、気がついた時には自分は将来医者にならないといけないんだって、勝手に思ってたな」
目の前のローテーブルから紅茶の入るカップを手の取って、三角先生は外を眺めながらそっと口をつける。
「もちろん、小さい頃は人並みにサッカー選手だとか、パイロットだとか、子どものなりたい職業が夢だった時もあったよ。でも、なんだろうね……夢、とかじゃなくて、現実だったっていうか」
「現実……?」
「医者にならなくちゃいけない、っていうのはね」
三角先生が戻したカップが、ソーサーに触れてカチャっと音を立てる。
その視線はまだ遠くをじっと見つめていた。
「でも、一番はなりたいと思って志した部分も大きい。両親を見てきて、尊敬していたからね」