次期院長の強引なとろ甘求婚
生まれた時から花に囲まれて育ってきて、私自身も自然とこの店を自分が継いでやっていくのだろうと思っていた。
それは、三角先生と同じく後継者としての使命感もあったけれど、一番はお店が、花が好きだったからだ。
好きになれたのは両親が花が好きで、そしてお店を大事にしてきたのをそばで見てきたから。
大病院と花屋を一緒にしてはいけないけれど、三角先生と私は同じような気持ちで家業を継ごうとしているのかもしれない。
「話してくれて、ありがとうございます」
「え……? どうして?」
「なんか、大事な話を聞かせてもらった気がして」
今ある素直な気持ちを口にすると、三角先生は私の頭を優しく撫でてくれる。
触れられてまた鼓動が跳ねてしまい、誤魔化すようにカップを手に取った。
「あ、そうだ、聞こうと思ってたんだけど、花の自動販売機って知ってる?」
唐突に切り出された話に横へ顔を向けると、三角先生は「あれだけ花に詳しいんだから、知らないわけないか」とふっと笑う。
「花の自動販売機……はい、実物はまだ見たことないんですけど、なんとなくは。でも、それがどうしたんですか?」
「うん、実は知り合いの病院がそれを入れることになって。話を聞いたら良さそうだから、うちも置いてみようと思うんだ。で……その中身の管理を、未久のところと契約できたらと思って」
「えっ……うちと、ですか?」
思いもよらない話の展開。
聞き返すと、三角先生は頷き微笑んだ。