次期院長の強引なとろ甘求婚
「どうかな? 悪い話じゃないと思うんだけど」
「ありがとうございます! 喜んでやらせていただきたいです!」
「良かった。ご両親にも相談してみてほしい」
「はい! じゃあ、また勉強しなくちゃですね……!」
三角先生の厚意で新たな仕事が舞い込むかもしれないことに心が弾む。
意気込んだところで三角先生のスマホがテーブルの上で震えはじめ、先生は「ちょっとごめん」と通話に応じた。
「――おお、なんだ、沙帆か。どうした?」
え……?
聞き耳を立てるつもりがなくても、横で始まった通話は嫌でも耳に入ってくる。
話が長くなりそうだったのか、三角先生はソファを立ち上がり、私の頭をひと撫でして広いリビングを出ていく。
サホ、って……誰……?
間違いなく女性の名前だし、三角先生のスマホから漏れてくる声はやっぱり女性の声だった。
途端にもやもやと気持ちが落ち着かなくなる。
数分して戻ってきた三角先生は、何事もなかったようにさっきの花の自動販売機の話の続きを始めるのだった。