次期院長の強引なとろ甘求婚


 まだ一緒にいたいと、帰りたくないと思ってしまったあの日から、樹さんのことばかり考えてしまっている。

 それまでの日々も、彼のことを考えることはあった。

 だけど、今はその比じゃない。

 気が付いたら考えていて、自らハッとするくらいだ。

 一緒の時間を過ごせば過ごすほど、彼の優しさや包容力に魅せられていく。


「いらっしゃいませ」


 店内でカットしたバラをドライフラワーにするために麻紐に結び付けていると、女性がひとり来店した。

 声をかけてまたすぐ、手元の作業に取り掛かる。

 カウンターの上に視線を落としていると、目の前に人影が迫るのを感じ取った。

 顔を上げると、今来店した女性が目の前に立っている。

 真正面から真顔でじっと顔を見つめられ、不思議に思いながらもいつも通り口を開いた。


「何か、お作りしますか?」

「あなた、樹のなんなの?」


 前置きもなく繰り出された言葉に、脳内でビックリマークが弾ける。


 え……?

 今……樹、って……。

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