次期院長の強引なとろ甘求婚
顔を上げて声の主を目にし、びくりと肩を揺らしてしまった。
そこに見たのは、忘れもしない顔――今日も鋭い視線で射抜かれ、あの日の記憶が鮮やかに蘇る。
しかし、その姿を見て私は目を見張る。
白いジャケットに同じ白いパンツという、看護師さんがしている白衣の姿だ。
ここの、看護師か何かだったの……?
〝サホ〟さんの鋭い視線は、私の胸に抱える花束に注がれる。
「ちょっと来て」
「え……」
一言それだけを言い、目の前から足早に立ち去っていく。
どうしようかと一瞬悩んだものの、無視することもできずその後を追いかけた。
先を歩く彼女についていくと、向かったのは病院の一階奥。
あまり患者はこないであろう廊下を進み、通用口から外に出ていく。
外に出ると、病院の裏手の人けのない場所で彼女は足を止め振り返った。
「あなた、人の話が理解できない人なの?」
唐突に始まった話に、私は驚いて顔を上げる。
〝サホ〟さんは私との間合いを詰め、じっと刺すような視線で私を凝視した。