次期院長の強引なとろ甘求婚
「言ったわよね? 彼に関わるのはもうやめてって」
「それは……」
「目障りなのよ。こんな花持って、病院にまで押しかけてきて」
容赦なく浴びせられる言葉の数々に、何か言い返そうにも声が出てこない。
今は黙って受け流そうと、抱える花束を持つ手に力が入った。
「聞いてるの? もう彼に、樹に関わるなって言ってるの! こんな花!」
「あっ、やめてっ――」
彼女の強引な手が、私の手からアジサイの花束を奪い取る。
そして躊躇もなく地面へと叩き付け、その勢いのまま私の肩を掴んで力いっぱいに突き飛ばした。
「今ここで約束して! もう、彼に近づかない。関わりを断つって!」
彼女の落とされた視線から、怒りの矛先が地面に落ちた花束へと向くのを咄嗟に察知して、ふらついた体で庇うように花束に覆いかぶさる。
「やめて! 花は関係ない!」
「うるさい!」
地面に屈んだ背中にど突かれる衝撃を受けた時、向こうから「ちょっと、やめなさい!」と誰かの声が聞こえた。