次期院長の強引なとろ甘求婚
君は花よりも可憐で
*side miku
「ありがとうございましたー」
閉店間際、最後のお客様を店先へと送り出す。
「……よしっ」
すっかり暗くなった商店街を帰っていく後ろ姿を見届け、今日も一日が終わったと小さく息をついた。
お店の前に並べたアジサイの鉢を一つ一つ店内へと運んでいく。
最後の鉢を抱えて入口へと振り返った時、背後から「まだ、大丈夫ですか」と声をかけられた。
そのよく知る穏やかな声に、どきんと心臓が勝手に反応する。
「……樹、さん」
振り返ると、そこにはいつも通りスーツをきちんと着こなした樹さんがひとり立っていた。
「こんばんは」
「こんばんは、いらっしゃいませ……」
久しぶりのせいか、なぜか自分自身ぎこちなさを感じる。
そそくさと鉢を運びながら「どうぞ」と店内へ促すと、樹さんは黙ってお店へと足を踏み入れた。
「昼間はありがとう。すごくきれいな、アジサイ」
「いえ……」
鉢を置き、入口へと振り返る。
樹さんは私のすぐそばまでやってくると、真面目な表情でじっと私を見つめた。
「それから……ごめんね」