次期院長の強引なとろ甘求婚
ごめん――。
そのフレーズに、胸がぎゅっと痛む。
わかっていたことなのに、どこを見ればいいのかわからなくなる。
「いえ……大丈夫、ですから」
「大丈夫なはずない。彼女には、金輪際、未久に近づかないでもらうよう約束させた。守らなければ、警察に届けてもいいと」
え……?
「それに、うちの病院も退職してもらうことにしたから」
話が全く見えなくなって、ぱちぱちと瞬きを繰り返してしまう。
「え、あの、ちょっと待ってください。話がよくわからないのですが、彼女って……」
「うちの看護師。未久のこと、勝手に目の敵にして……追及したら、このお店への嫌がらせも彼女がやったことだった」
樹さんの口から次々と告げられる衝撃的な事実に頭がついていかない。
じゃあ彼女は……樹さんとは、なんでもないということなの……?
「うそ……。あの方、私てっきり……樹さんと婚約でもされているのかと」
「婚約? ちょっと待った、どうやったらそんな話になるの」
「だって……」
思っていたことを口に出すと、膝ががくがくとしてきて、その場に崩れ落ちてしまった。