次期院長の強引なとろ甘求婚
「ちょっ、未久」
「よ、良かった……」
自然に出てきた〝良かった〟……。
それが一番の、自分の本心だったと知る。
樹さんには決められた相手がいるのだと思って、知らぬ間にショックを受けていた。
だけど、樹さんとは身分が違う。だから、彼のことは忘れなければならないと、自分の中で結論を出していた。
でも、頭ではそう思っていても、秘める気持ちは違っていたということ。
もう引き返せないくらい、樹さんに惹かれてしまっている。
「え、良かったって……?」
私の両二の腕を掴んで、樹さんは優しく力強く立ち上がらせてくれる。
ついホッとして良かったなんて言ってしまうと、全て認めた気持ちに顔に熱が集まる。
「あ、いえ、そのっ……」
なんと伝えればいいのか言葉を選んでいると、私の赤くなっているであろう顔を覗き込むように樹さんが顔を近付けた。
「俺の気持ちは、伝えているはずだよね?」
真剣な目に見つめられて、時が止まったような不思議な錯覚に陥る。
「伝わってないなら、もう一度言うよ? 未久、俺は君が好きだよ」
樹さんとふたりきりの世界にいるような感覚の中で、心臓が止まりそうな言葉を聞いた。