次期院長の強引なとろ甘求婚
「わぁ……すごいお部屋……」
中に入ると、未久はひとり客室を進んでいく。
コーナースイートになっている部屋は、落ち着いたブラウン調のカラーコーディネートで、磨かれた広いガラス窓からは東京の夜景が幻想的な景色をつくり出していた。
「こんなお部屋に入ったの、初めてです……」
「本当に? それは良かった」
窓から夜景を眺める未久の背後に立ち、そっと髪に触れてみる。
髪の表面を撫で、指を通して梳くようにすると、未久は振り向いてこっちを見上げた。
「あのっ、私、気になっていたんですけど……」
「……ん?」
「その……樹さんは、家柄もご立派ですし……私とこうして一緒にいることは、許されることなんでしょうか?」
なにを神妙な顔で言い出したかと思えば、そんないらぬ心配。
思わずクスッと笑ってしまうと、未久の二重の目が少し大きく開いた。
「それは、全く考える必要のないことかな」
「え、でも……ご両親が、お見合いしろと言ったりとか」
「見合い? 俺に?」
「例えば……政略結婚的な」