次期院長の強引なとろ甘求婚
真剣な目でじっと見つめられ、思わずまたふっと笑いが込み上げる。
その瞳に近づき、瞼にそっと口付けた。
「親には宣言してきてる。今まで、医師を目指してやってきて、病院だって守っていくつもり。だから結婚くらいは、自分の愛した人とさせてほしいって」
未久の頬が桜色に色付いていく。
腕を回して背中から抱き締め、髪に口付けを落とした。
確かに後継者という身の宿命、同じ医師との縁談や、病院にとって利益となるだろう縁談が舞い込むこともあった。
でも、結婚だけはと譲れなかった。
そういうところは、折れて見合いの席に仕方なくでも顔を出す沙帆よりも断然頑固だったんだと思う。
「客から前進して、近付くことができてから、未久との未来しか考えてないよ」
彼女の抱える心配や不安を全部拭い去ってしまいたい。
そんな思いを込めて伝え、回した腕に力を込めた。
「樹さん……」
未久の手が、抱き締める腕にそっと触れてくる。
もう一度、今度はこめかみ辺りに唇を寄せ、静かにキスを落とした。