次期院長の強引なとろ甘求婚


「っ……い、つき、さん」


 リップ音を響かせて鎖骨に口付けられるだけで、びくっと体が跳ねてしまう。

 トップスの縁から指が入ってくるのを感じると、咄嗟にその手を服の上から両手で押さえてしまった。


「あのっ、仕事後で、汗かいてるので、やっぱり……」

「バラ風呂に入っておく? 一緒にだけど」

「そっ、それも困ります!」


 恥ずかしさで頭がよく働かない。

 一日働いて汗臭いかもしれない状態で触れられるのも嫌だけど、いきなり一緒にお風呂に入るというのはハードルが高すぎる。

 私の胸元から顔を上げた樹さんは、今まで見たことのないどこか蠱惑的な微笑を浮かべて私の顔を間近で覗き込んだ。


「じゃあもう、このまま抱かせて? 俺も、もう我慢できない」


 普段の穏やかで落ち着いた樹さんから出てきたとは思えない、どこか余裕のない言葉に、胸がきゅっと締め付けられる。

 目の前できっちり結ばれたネクタイが外されていくのを、高鳴る鼓動の中でじっと見つめていた。

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