異世界から来た愛しい騎士様へ
情けなくて、悔しくて。
母のようになりたいと思っているのに叶わなくて。
瞳に込み上げてくるものを感じながらも、エルハムはそれを隠そうと苦しげに微笑みをミツキに返すしか出来なかった。
「やはり、姫様は昔と何も変わらないな。」
エルハムの微笑みと同じような表情を見せて、ミツキはそう言った。
いつからだろうか。
彼がエルハムに対して、敬語を使い始めたのは。
ミツキがシトロンの事を詳しく知るようになり、そして騎士団に入団して少し経った頃だったとエルハムは思った。
出会ったばかりの頃は、無愛想ながらも友達のように気軽に話している様子だった。けれど、少しずつ固い言葉を話すようになった。エルハムは「その話し方はやめて。」と、何回も伝えたけれど、「姫様の専属護衛なので。」と言うだけで、ミツキは応えてはくれなかった。
そのうちに、今のような丁寧すぎる言葉でエルハムに接するようになったのだ。
身近に感じていた人が少しだけ距離が遠くなった。そんな切ない気持ちになったのをエルハムは今でも覚えていた。