異世界から来た愛しい騎士様へ
それなのに、今の彼の言葉はどうだろう。
呼び方は変わらないはずなのに、話し方や語尾が昔の彼のままに感じてしまい、エルハムは懐かしくも嬉しく思い、目を見開いてしまった。
「自分が怖かったり、悲しくても、まずは他人の事を優先にする。それが知らない人でも。だから、俺はおまえの専属騎士になった。………体を張って助けてくれたんだ。次は俺が………。」
「ミツキ……。」
「だから、俺が怪我したとき、おまえはそんな事するなと言ったけど……俺は変えるつもりはないならな。それに、セイの事は、今不安定になってるはずだから落ち着いてからセイが何を求めているか、考えればいいと思う。」
「………わかった。ミツキ、ありがとう。」
エルハムは、自分が怪我をするよりもミツキが血を流す方が怖いと思ってしまう部分もあった。
けれど、それがミツキの本当の気持ちだとわかり、エルハムは彼の思いが知れたのが嬉しかった。あまり自分の事を話さない彼。
けれど、昔の出会いを大切にして自分の事を考えてくれているのが、くすぐったくもあり、幸せだと思えた。
セイの事も、ミツキが言ってくれたように、彼女と話をしてからいろいろ考えよう。
ミツキの言葉で、エルハムはそんな風に前向きに考えられるようになっていた。
ニッコリとエルハムが微笑み返すと、ミツキも安心したように笑顔を見せた。
どんよりとして曇っていた気持ちがゆっくりと晴れて、前を向けるようになった。エルハムはそんな気がした。