異世界から来た愛しい騎士様へ
第12話「震える体」
エルハムは嬉しかった。
10年前のように、素直に笑いあったり、素の言葉で話し合ったり、言い合ったり出来る。
そして、守ると言ってくれた。
距離がまた戻ったような気がした。
エルハムは嬉しくなって、目を細め微笑みながら、幼い頃と同じ黒髪と黒目で、大人になった彼を見つめた。
「ねぇ、ミツキ。また、そうやって話しを………….。」
エルハムが彼の腕に手を伸ばしながら、声を掛けようとした時だった。
コンコンッと、エルハムの部屋に来訪を知らせるノックが聞こえた。エルハムは、話しの続きをしたかったものの、もちろん無視することは出来ず、伸ばしかけた手を自分の膝の上に戻した。
「はい。どうぞ。」
「……エルハム様。失礼致します。」
そう言って、深く礼をしてから部屋に入ってきたのは、セリムだった。
セリムは金色の髪をサラサラとなびかせながら颯爽と部屋に入った。けれど、表情は緊迫しており、何かあったのだとわかった。
そして、エルハム達が座っている場所から少し離れた所で立ち止まった。そして、エルハムの目の前に居るミツキをちらりと一見したが、そのまま何も言わずにエルハムに視線を向けた。
ミツキは、騎士団長であるセリムが入ってきたとわかると、立ち上がりセリムに一礼し、そのまま立っていた。