ビタースウィートメモリー

みくが出ていった時には、二人とも食欲がなくなっていた。

白ワインが一本空になり、つまみのローストポークも半分ほど消えつつあった。

二本めをグラスに注いでいる時、感慨深げに大地が呟く。

「女性トラブルで謝罪したの、人生で初めてだ」

「そうかよ。で、どうだった?」

「うん……さすがにちょっとだけ、罪悪感が刺激された。にしてもあいつ、俺の何が良かったんだろ」

「顔だろ。他に取り柄ないだろ」

みくに同情していた悠莉としては、いくら友人といえど、大地を庇う気はさらさらない。

自分の過ちを認めさめざめと泣くみくを見たあとに、この女性の敵を見ていると、どうしても言葉がきつくなってしまう。

しばらく黙々とワインを飲み続けた大地だが、何か言おうとしては口をつぐみ、そしてまたワインに手を伸ばした。

酒の勢いがないと言えないことのようで、悠莉は三本目のワインを注文した。

新しいボトルがほとんどなくなりかけてからようやく、大地は重い口を開いた。

「俺が女にだらしなくなったきっかけは、多分高校生の時」

それまで同じ生活圏にいながら知ることのなかった大地の過去を、その日初めて悠莉は聞いた



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