ビタースウィートメモリー
平日は朝ごはん以外はあまり作らない悠莉だが、その分土日は予定がなければ自炊していた。
高校時代の友人との女子会が来週に延期されたため、今日と明日は久しぶりに誰にも会わない休日である。
悠莉は財布とスマホだけ持ってスーパーに出かけた。
今日はせっかくの料理日和だ。
何日分か作って冷凍するのも良い。
上機嫌で野菜コーナーをうろついていると、スキニーのポケットから振動が伝わり、悠莉はすぐに着信を見た。
大地かと身構えたが、美咲からの着信であった。
安心したようながっかりしたような、なんとも言えない気分で電話に出る。
「おはよう悠莉!ねえ、今日暇?」
「おはよう、朝から元気だな。今日は暇だけど料理したいから家から出ないぞ」
「夕方からお邪魔していい?」
「なんだかご機嫌だな。良いよ、飯作って待ってる」
「やった!じゃあ17時に行くね!」
美咲のテンションがこれだけ高い時は、だいたい昇給した時か恋愛絡みで良いことがあった時の二択だ。
普段から美人ではあるが、上機嫌な日の美咲はとにかく可愛い。
世界で一番幸せなのは自分とでも言わんばかりのキラキラした笑顔は、同性の悠莉ですら魅了される。
そしてそんな時に美咲が話すことはだいたい自慢かのろけ話しだが、なぜか聞く人を不快にさせないのは一種の才能である。
昨日の奢りが財布に与えたダメージは少なくないが、悠莉は少しだけ奮発してひき肉を三つ買った。
今夜のメインはミートボールスパゲッティーにしたかったが、予定を変更してミートローフだ。
給料日まであと四日。余裕はないが、まあ大丈夫だろう。